2022.11.11   ブログ

ノーコード ・ ローコード 新たな開発の時代

01. 概要

新型コロナウィルスの影響で非対面文化が急速に普及したこの数年間はいわゆる「開発者の求人難」の時代であった。産業全般に渡ってDXが加速化したこともあり開発者の需要が急増したためである。これまでの人で不足に加え、急速に増える需要に比べて供給は足りない状況が続けて開発者不足は日々深化される様子をみせた。そんな中、コーディングを必要としなかったり、最小限のコーディングだけで開発ができる ノーコード (no-code) ・ ローコード (low-code)が開発者の求人難の解決策となり、DXの触媒剤にもなると関心が集まっている。

ノーコード は名前通りコーディング無しで開発が出来ることを意味する。クリックやドラック&ドロップ(drag-and-drop)または音声などで、より直観的なコマンド入力を可能とし、開発者ではない人でも簡単にアプリケーションやプログラムを作ることができる。
ローコードは最小限のコーディング知識だけで、一般的な開発者と似たようなコーディングができるように作業を最小限して開発が出来ることを意味する。コードの入力過程を最少化することで開発業務の効率を高めることに役に立つ。
ノーコード ・ローコードのプラットフォームが一般化すると、現業の各実務者が社内または外部の開発者に依頼することなく直接業務に必要なプログラムを、直ぐに開発できるようになり、全般的なビジネスの柔軟性及び迅速性の確保が出来ると期待されている。

全世界がDXを迎えている今、熟練した開発者のものだと思われていた開発領域の敷居が、画期的に下がるノーコード ・ローコードの需要は益々拡大されると思われている。グローバル市場調査機関ガートナー(Gartner)は2024年までノーコード ・ローコードで開発された業務用のアプリが全体の65%を占めると予想し、他の市場調査機関であるマーケットアンドマーケット(Makrkets and Markets)は世界のノーコード ・ローコードの市場規模が2020年132億ドルから2025年455億ドルまで急成長すると展望した。

02. ノーコード ・ ローコード 市場の主人公

このようにノーコード・ローコードの重要性が注目されることで関連市場を先占するためのIT企業の動きが活発になっている。特にグローバルビックテクの動きが目立っている。マイクロソフト(MS)の「Power Apps」とグーグルの「AppSheet」が代表的である。2015年公開されてドラック&ドロップでアプリ開発ができるマイクロソフトのPower Appsは、最近人工知能を活用して音声の支持だけでコーディングができる機能を追加し、手で描いたデザインなどのイメージファイルをアップロードすると勝手に実現される機能も追加することで一歩先に進んだとされた。

Power Apps (参考:マイクロソフト)

【▲ Power Apps (参考:マイクロソフト)】

グーグルは2020年ノーコードのスタートアップAppSeetを買収し、AppSeetはExcelやGoogleスプレッドシートのデータを選択し、どのような構造で作るかクリックするだけでアプリを作ってくれる。Googleドライブ、Googleマップなど、Googleの他のサービスと連携して使うことができるメリットを持っている。
また、2021年にはノーコード機能をサポートする人工知能プラットフォーム「Vertex AI」を発表して事業を強化した。
アマゾンウェブサービス(Amazon Web Service:AWS)も2020年ノーコード開発プラットフォーム「Honeycode」を発表して参戦した。クラウドインフラ市場の先頭であるためAWSクラウドと連携して使用できる。

このような流れで実際ノーコード・ローコードのプラットフォームを活用してサービスを開発、商用化した事例も続々登場している。
まず、ニューヨーク市は新型コロナウィルスの陽性者の健康状態を登録するシステムをたった3日で構築した。なにより迅速にプログラムの開発ができるノーコード・ローコードのメリットが一番分かりやすい事例だと思う。

それだけではなくフレックスタイム制を導入したファッション企業H&Mはモバイルアプリ「FLEXI」を開発して職員の勤怠を管理している。自動車企業であるトヨタ(Toyota Moto North Ameriaca)は製品品質管理から新型コロナウィルスの検査業務までサポートできる400個以上のアプリを作成し、物流企業のDHLはヨーロッパ全域からトレーラー車両の管理ができるアプリを作った。

DHLアプリケーション (参考:DHL)

【▲ DHLアプリケーション (参考:DHL)】

03. ノーコード・ローコードの展望は?

市場調査業者であるIDCが実施した、あるアンケートによると全体の応答者の中、48.6%は「社内革新を進めるため」、39.3%は「新型コロナウィルスのため」ノーコード・ローコードのサービスを購入したと回答した。ポストコロナ時代に合うインフラ構築とスマートワークの環境造成のためにはこれからさらに多くのノーコード・ローコードのサービスが出ると予想される。

しかし、ノーコード・ローコードで開発が一般化されるのはまだ早いという意見もある。まず、現在のノーコード・ローコードは柔軟性が足りないため完全に開発者の代わりにするのは難しい。決まったプラットフォームの中で開発が行われるため、成果物の多様性には限界が明らかに存在する。ノーコード・ローコードの一般化で開発者の業務を減らすことはできても、サポートしている機能が限られているためあくまでも開発業務の一部をサポートし、効率性を高める補助手段に限られる。

また、セキュリティ問題もある。もしノーコード・ローコードで開発されたプログラムが社内でのみ使用されるのであれば大きな問題はないと思うが、外部に公開される汎用サービスの場合はもっとセキュリティに注意する必要がある。基本的に事前に外部の業者がコーディングしたプラットフォームを利用するため、予想外のセキュリティ脆弱性が存在する可能性がある。そして、開発されたプログラムは商用ソフトウェアとは違って必要な機能を最小限で実現し、セキュリティ脆弱性に関する診断やメンテナンスなども行われないことが考えられるため、セキュリティに注意が必要である。

更に、ノーコード・ローコードプラットフォームで実務者が統制なくプログラム開発を行う場合、どこでセキュリティホールができたのか把握しにくい。つまりセキュリティガバナンスがきちんと立てられてない環境でノーコード・ローコードはむしろ技術の負債を増やし、さらに大きいな混乱を引き起こす危険性がある。従って安全なノーコード・ローコードの活用のためにはセキュリティ政策などの教育と共に企業内のIT活動はある程度統制される基盤を事前に整える必要がある。

ノーコード ・ローコードの展望は?

04. DX時代に吹く変化の風

アメリカのニューヨークタイムズ(NYT)は最近【「ノーコードAI」が大衆に力を与える】というタイトルの記事でノーコードは「世界を変える動き」と表現し、「ノーコードは市民開発者(Citizen Developers)の誕生を意味する」と報道した。様々な限界点があるのにもかかわらず開発者不足現象とDXの難しさを解決するためのパラダイムで素早く定着している状況から考えると、ノーコード・ローコードに関する世界の期待がいつよりも高まっていると実感できる。

絶対的な市場の強者がなく、多様なプラットフォームがたくさん出ている今、どのように準備をして適用し、発展させるかその基準と程度を決めるのが何よりも重要な時点である。ノーコード・ローコードの未来がどうなるかは今までの新技術のように問題点と正面にぶつかって正しい道へ行かせるかどうかによるものだと思う。

DX時代に吹く変化の風

Written by CYBERFORTRESS, INC.

サイバーフォートレス CYBERTHREATS TODAY 編集チーム

サイバーフォートレスは、サイバーセキュリティ対策を提供するセキュリティ専門企業です。

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