AIエージェント:秘書から行動するエージェントへ

映画やドラマに登場するサイバーセキュリティ状況室を思い出してみてください。
数十台の巨大なモニターの前で担当者たちが緊迫した様子でキーボードを叩き、赤い警告灯が点滅して緊張感が漂います。
しかし現実のセキュリティオペレーションセンター(SOC)は少し異なります。
ここは1年365日、24時間明かりが消えることのない企業のデジタル最前線です。

セキュリティ監視担当者は3交代制で昼夜を問わず勤務し、ファイアウォール、侵入防止システム(IPS)、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)、エンドポイント検知・対応(EDR)など数十種類のセキュリティ機器が吐き出すイベントをリアルタイムで監視します。
単に画面を見守るだけではありません。
攻撃の疑いのある兆候が捕捉されると、直ちにパケットやログイベント、アラートなどを分析し、実際のハッキング試行かどうかを判別し、IPブロックやネットワーク隔離といった緊急措置を実行しなければなりません。
華やかなアクションというよりは、絶え間なく流れ込むログとの退屈で孤独な戦いが毎日繰り返される場所に近いのです。

セキュリティ担当者は、一日数千、数万件も鳴り響くセキュリティアラートに埋もれて過ごします。
これをアラート疲労(Alert Fatigue)と呼びます。
皮肉なことに、警告が多すぎると何も警告していないのと同じです。
疲労困憊した人間が誤って真の危険信号を見逃す可能性があるからです。
結局、人間の集中力と判断力だけでは、この膨大なデータを処理しきれなくなる臨界点があります。

こうした人的限界を克服するために登場したのが、AIエージェント(AI Agent)です。
単に質問に答えるだけだった生成人工知能(Generative AI)が、どのようにセキュリティ現場を変えつつあるのかを理解するためには、まずAIがどのように進化してきたのかを考察する必要があります。

01. 生成AIの進化:脳に手を添える

私たちがよく接してきた初期の生成AI(ChatGPTなど)は、賢いAIアシスタント(AI Assistant)でした。膨大なセキュリティ知識を学習していたため、「SQLインジェクション攻撃って何?」と尋ねれば優れた回答を返し、複雑なレポートを要約するのにも卓越していました。しかし明確な限界がありました。それは行動できないという点です。どれほど賢くても、AIはチャットウィンドウ外のファイアウォールを制御したり、悪意のあるIPを遮断するといった実務を遂行することはできませんでした。まるで頭脳は明晰だが手足が縛られたコンサルタントのようでした。

ここで一歩進化した概念がAIエージェントです。重点はAIにツールを握らせたことです。大規模言語モデル(LLM)という脳に、例えばシステム検索、データ分析、セキュリティ機器制御という手を接続したのです。

この変化は革命的です。
今やAIは単にユーザーの質問に回答(Generation)するだけでなく、目標達成のために自ら計画を立てツールを使用します。
「このIPを遮断して」と指示すると、従来のAIは「できません」と答えていましたが、エージェントはファイアウォール遮断ツールを取り出して直接実行します。
つまり、話すAI(Talker)から働くAI(Doer)へと進化したのです。

従来のセキュリティオーケストレーション(SOAR)が定められたシナリオに従って機械的に動くルールベース(Rule-based)であったのに対し、AIエージェントは文脈を理解し柔軟に対応する状況ベース(Context-based)の判断を下す点で、既存技術とは明らかに差別化されます。

02. 無数のアラームの中から真実にたどり着く第一防衛線

従来の監視業務は砂浜で針を探すようなものでした。
ファイアウォール、アンチウイルス、サーバーなどあらゆる機器から送られてくる信号の90%以上は、実際の攻撃ではないか、無視しても問題ない誤検知(False Positive)です。
しかし、万が一の1%の致命的な攻撃を見逃さないために、人はこれら全ての信号を一つ一つ確認しなければなりませんでした。

ここで、この一次防御ラインにAIエージェントが投入される状況を想定してみましょう。
AIは24時間休みなく流入する全てのアラームをリアルタイムで分析します。
単にテキストを読むだけではありません。エージェントは外部脅威情報サイトにアクセスし、該当IPがブラックリストに登録されているか確認し、過去の類似事例データを照会して統計的に比較するなどの予備調査を行います。

こうした能動的な調査を通じて、エージェントは「このアラートは単純なエラーである確率が99%です」という意見と根拠データを提示し、該当アラートを誤検知の疑い(Low Priority)として分類します。
AIが任意に削除するのではなく、アナリストのメインダッシュボードで後回しにしておくのです。
これにより、セキュリティ担当者は数万件のアラートの中からAIが選別した真に危険と思われる重要アラートにまず集中し、分類された誤検知は後で一括レビューする効率的なプロセスが可能になります。

03. 複雑な調査を明快に整理する超高速秘書

ウェブ攻撃アラートが発生した際、これが実際の被害につながったかどうかを確認するプロセスは非常に煩雑です。
担当者はWAFログを確認して攻撃の種類を把握し、ファイアウォールログを調べてアクセスが許可されたかどうかを確認し、IPSログとウェブサーバーログ(Weblog)までを相互検証して攻撃の成功有無が確認できます。

AIエージェントが導入されれば、次のようなシナリオが可能になります。WAFでSQLインジェクション検知アラートが発生すると、エージェントは直ちに関連機器のログを照会します。

1. WAFログ分析:攻撃構文と対象URLの特定
2. ファイアウォール&IPSログ照会:該当IPの先行トラフィック(ポートスキャン等)の有無確認
3. Webログのクロス検証:攻撃時点のレスポンスコード確認(200 OKなら攻撃成功、403/404なら攻撃失敗)

担当者がアラートをクリックした際、画面には次のようなAI分析結果が表示されます。

「該当IPはWAFでブロックされましたが、直前のファイアウォールログで多数のポートスキャンが検出されました。Webサーバーログ確認の結果、レスポンスコードは403であり、実際の侵害は発生していません。」

担当者はログウィンドウを開いたまま「Alt+Tab」で切り替えて比較する必要はありません。
AIが整理したタイムラインを確認し、判断して承認するだけで済みます。

04. 複雑なコマンドの代わりに一言で

セキュリティデータを扱うためには、SQL(Structured Query Language)や各機器に適合した複雑な検索コマンド(クエリ)を習得する必要がありました。
これは新人アナリストや経営陣がセキュリティ状況を直感的に把握する上で大きな壁となっていました。

しかしLLMを搭載したAIエージェントは人間の言葉(自然言語)を理解します。
例えば、チャットウィンドウに「先月、海外からの接続試行が最も多かった国の上位を表示して」と入力すると、エージェントが自動的にデータを抽出して分析し、結果を表示します。

単にデータを羅列するだけでなく、「普段よりある国からのアクセスが300%急増しました」といったデータ分析結果まで併せて提示する形です。
これにより、専門エンジニアでなくとも誰もが容易かつ直感的にセキュリティを確認できるデータ分析の大衆化が可能となりました。

05. ジュニアには成長の加速を、シニアには洞察の時間を与えよ

初級セキュリティアナリスト(Junior)にとって、エージェントは親切なメンター(Mentor)です。
複雑なクエリ構文を知らなくても自然言語でデータを照会できるため、業務の壁が低くなります。
また、単純で反復的な誤検知処理業務から解放されるため、AIが分析した結果をレビューしながら攻撃手法を学び、分析能力を迅速に高める時間を確保できます。

上級セキュリティアナリスト(Senior)にとってエージェントは頼もしい助手(Helper)です。
溢れるノイズ(Noise)はAIに任せ、人間にしかできない高度な脅威ハンティング(Threat Hunting)とセキュリティ戦略立案に集中できます。
「ログを確認するために一日を費やした」という言葉は過去のものとなり、組織のセキュリティレベルを高める核心的な意思決定に集中できる洞察の時間を獲得できるのです。

06. エージェントの自律性と人間の信頼

AIエージェントは確かに強力なツールですが、結局このツールを完成させるのは人間の信頼と制御です。
セキュリティ現場は、たった一度の判断ミスが企業ビジネス全体に影響を及ぼし得る特殊な領域だからです。
したがって、AIの自律性を無条件に許容するよりも、「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop)」、つまりAIの意思決定プロセスに人間が介入し、結果を検証してフィードバックを与える方式を通じて、AIと人間が相互補完する構造を構築すべきです。

初期段階では、AIが分析した対応策を人間が検討・承認するプロセスを経て、AIが組織のセキュリティ環境を正しく理解しているかを検証する時間が必要です。
この過程でAIは単に結論を通知するだけでなく、どのような根拠でそのような判断を下したのか説明できなければならず、人間はこれに基づいてAIの判断基準を修正し、信頼を築いていきます。

このように十分な学習と検証を通じて信頼が築かれた領域から段階的にAIに自律権限を委任していくとき、私たちは初めてAIの速度と人間の正確性を兼ね備えた最も安全で効率的なセキュリティ体制を構築できるようになります。

07. 結論

AIの発展が自分の立場を脅かすのではないかと心配ですか?あまり心配しないでください。
AIエージェントは代替のためではなく、あなたの能力を高める頼もしいパートナーです。
単純反復業務と情報収集の沼から解放されたセキュリティ担当者は、今や森を見渡しています。
攻撃者の意図を把握し、全体的な防御戦略を立案し、AIを監督するセキュリティ指揮官へと進化しています。

ハッカーの攻撃もAIを通じてより巧妙かつ高速化しています。
これに対抗するため、私たちの防御システムもまた、AIエージェントという強力なパートナーと共に進化しなければなりません。
より速く、より正確に、より効率的なセキュリティ監視センター。AIエージェントが開くセキュリティの新たな未来です。

Written by CYBERFORTRESS, INC.

サイバーフォートレス CYBERTHREATS TODAY 編集チーム

サイバーフォートレスは、サイバーセキュリティ対策を提供するセキュリティ専門企業です。

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